1.   1. 朝起きはすべての基本
  2.   2. 挨拶は人を動かす
  3.   3. よい結果は、準備次第
  4.   4. 一日、一回でよい
  5.   5. 手紙はすぐに書け
  6.   6. 出足を早く、引き足を早く
  7.   7. 人を感動させる話し方
  8.   8. 喜んで支払えば、お金は...
  9.   9. 即断即決の仕事法
  10. 10. 物の見方を変えるユーモア
  11. 11. 掃除は、最も簡単な修行法
  12. 12. エイッと明朗な心に切り替...
  13. 13. 職業が天職になっているか
  14. 14. 本気なら言葉に出して言う
  15. 15. 徹底的に見る
  16. 16. 「後始末」の習慣は世界を...
  17. 17. 日記で自分を成長させる
  18. 18. 労働でなく喜働でなければ...
  19. 19. 質素な生活は視野を広げ...
  20. 20. 理屈抜きに実験する
  21. 21. 事が済んだ後の心得
  22. 22. 心に空所を持つ
  23. 23. かけがえのない一瞬として...
  24. 24. 人を変えるよりも自分を改...
  25. 25. 思いやりが人の心を動かす
  26. 26. 妥協なき愛で叱る
  27. 27. 心の底から聴く
  28. 28. 人間、謙虚が第一
  29. 29. どんなことでも命がけでやれ
  30. 30. 姿勢を正せば、心境も正さ...
  31. 31. 洗面・入浴にも人柄が現れ...
  32. 32. 感謝の心なくして健康はない
  33. 33. 男は機関車のように生きよ
  34. 34. 女はゴムマリのように生きよ
  35. 35. 泣きたいときには泣け
  36. 36. 雨を喜ぶ
  37. 37. 大自然の立場に立つ
  38. 38. 教えは天地に満ちている
  39. 39. 気づいたらすぐする
  40. 40. 自分の根源は太陽にある
  41. 41. 断固たる決心が道を開く
  42. 42. 拝む形の大切さ

丸山敏雄の発見した、幸せになる生活法則


35 泣きたい時には泣け

  弟子たちは皆、かたじけなさに涙をこぼした。
  「この人のためだったら何でもやりたい」
  そんな思いにさせた師匠とは、いったいどんな心持ちでいたのか。

  大森金次郎という社長がいた。目の中に入れても痛くないほどに溺愛した息子がいたが、ある日、風邪をこじらせ急死してしまった。大森は、絶望のあまり体に変調を来し、口の中がただれ、お茶も飲めなくなった。もちろん仕事も手につかない。
  敏雄を訪ねて、悲しみを訴えた。一部終始を聞いて、敏雄はぽつりと尋ねた。
  「大きな声で泣きましたか?」
  大森は、内心、男は泣くものではない、悲しんではならぬ、と思っていた。
  「いえ、泣きません」
  「なぜ、泣かないのですか?」
  「私には泣く場所もありません。私が涙をみせると、家内も娘も泣きくずれて、収拾がつかなくなってしまいます」
  「では、隅田川のほとりへでも行って、声を上げて泣きなさい。一人息子を失くして、悲しくないわけがない。存分に泣きなさい」
  大森は、隅田川の堤へ飛んで行った。そして、死んだ息子の姿を思い浮かべながら、声を張りあげて男泣きに泣いた。涙も涸れ尽きたかと思われるほど、泣いて泣いて、泣き通した。もちろん悲しみがなくなったわけではない。だが、気分がすっきりして、いくらか元気が出てきた。口の中のただれは、すっかり治まっていた。
  怒るべき時に怒らない。喜ぶべき時に喜ばない。笑えばいいのに笑わない。そんな人に限って、つまらないことに怒り出す。どうでもいいことに悲しむ。自分の感情に素直ではないのだ。体面をとりつくろい世間体ばかり気にしている。喜怒哀楽の豊かさは、人間性のバロメーターである。
  孔子の弟子の中で、師の信頼が最も厚かった顔回が、三十そこそこの若さで早世した。その時、孔子は「天、我を滅ぼせり」と、身悶えして泣き明かした。気が違ったかと弟子が心配するほどだったが、それはまさしく孔子の説く「仁」のほとばしりの姿でもあった。
  泣くことによって心の痛みや傷が癒され、気力を取り戻すケースはよくある。泣きたい時には泣くのがよい。
  涙にもさまざまな涙がある。怒りの涙や恨みの涙、悔し涙は、毒素となって体をむしばむばかりか、人をも傷つける。これらは、不幸に結びつく暗い涙といえる。
  逆に、嬉し涙、ありがた涙、熱い涙は、幸福につながる良い涙の部類に入る。
  なかには、泣くことによって内面が浄化され、人間性が一変する涙もある。
  自分のわがままから発した暴言や冷たいひと言、心ない仕打ちが、どれだけ相手の心をひどく傷つけ、悲しく辛い思いをさせたことか・・・・・・。その罪を懺悔する時、込みあげてくる嗚咽と慟哭。亡き父母の位牌にひれ伏して詫びる涙、また妻の前に身を投げ出し、時に社員に首を垂れる。子に詫びることもある。涙に明け、涙に暮れる日々。
  こうした境地を、敏雄は「涙の洗浄」と称して、こう解説する。

この時、あらゆる我情は、洗いさられた明澄至純の心境に達する。家が変わり、環境が変わり、人が変わる。世界が清められる。これ正しく倫理の世界における心境の登龍門である。人生の真実、実在の一角への突入である。

  理性に基づく知的反省は、頭の遊戯に過ぎない。人間の本性が根底から変わろうとする時は、必ず涙を伴う。泣くことは人格を変容させ、純化させるのだ。