1.   1. 朝起きはすべての基本
  2.   2. 挨拶は人を動かす
  3.   3. よい結果は、準備次第
  4.   4. 一日、一回でよい
  5.   5. 手紙はすぐに書け
  6.   6. 出足を早く、引き足を早く
  7.   7. 人を感動させる話し方
  8.   8. 喜んで支払えば、お金は...
  9.   9. 即断即決の仕事法
  10. 10. 物の見方を変えるユーモア
  11. 11. 掃除は、最も簡単な修行法
  12. 12. エイッと明朗な心に切り替...
  13. 13. 職業が天職になっているか
  14. 14. 本気なら言葉に出して言う
  15. 15. 徹底的に見る
  16. 16. 「後始末」の習慣は世界を...
  17. 17. 日記で自分を成長させる
  18. 18. 労働でなく喜働でなければ...
  19. 19. 質素な生活は視野を広げ...
  20. 20. 理屈抜きに実験する
  21. 21. 事が済んだ後の心得
  22. 22. 心に空所を持つ
  23. 23. かけがえのない一瞬として...
  24. 24. 人を変えるよりも自分を改...
  25. 25. 思いやりが人の心を動かす
  26. 26. 妥協なき愛で叱る
  27. 27. 心の底から聴く
  28. 28. 人間、謙虚が第一
  29. 29. どんなことでも命がけでやれ
  30. 30. 姿勢を正せば、心境も正さ...
  31. 31. 洗面・入浴にも人柄が現れ...
  32. 32. 感謝の心なくして健康はない
  33. 33. 男は機関車のように生きよ
  34. 34. 女はゴムマリのように生きよ
  35. 35. 泣きたいときには泣け
  36. 36. 雨を喜ぶ
  37. 37. 大自然の立場に立つ
  38. 38. 教えは天地に満ちている
  39. 39. 気づいたらすぐする
  40. 40. 自分の根源は太陽にある
  41. 41. 断固たる決心が道を開く
  42. 42. 拝む形の大切さ

丸山敏雄の発見した、幸せになる生活法則


24 かかがえのない一瞬として迎え、送る

  出会いは一回限りのもの。
  同じ形で出会うことは二度とない。
  縁がなければ会えなかった、
  その「時」をかけがえのないものとして捉えよう。

  日本には、送迎の作法が数多くある。
  たとえば、茶の湯はこう教える。
  「お客様が帰る時には、姿が見えなくなるまで灯を消してはいけない」
  あるホテルでは、お辞儀の角度を正しく身につけるまで厳しくしつけられるという。
  作法はTPOによりさまざまな「形」がある。ここでは作法を論じるのではなく、「心」によって、「形」がどのようになるかを考えたい。
  ある年の夏の午後、渡辺末雄は、丸山敏雄の住まいを訪ねた。ことのほか暑い日だった。渡辺は家人の案内で、部屋に入った。急ぎの仕事のために、和服姿の敏雄は中央にある机の前で静座をして、筆をとっている。渡辺は邪魔をしないように配慮しながら、部屋の隅に座った。
  「やあ、いらっしゃい」
  来客に気づいた敏雄は筆をとめ、ニッコリと微笑んだ。
  「今日は特に暑いですね。これは脱ぎましょう」
  渡辺の額が汗で濡れているのを見た敏雄は、自ら着物を脱ぎ、シャツ一枚になった。ホッとして渡辺も背広を脱いだ。
  敏雄は、来客があれば、その日の寒暖、相手の心境や体調を速やかに察して、即座に来客の最もリラックスできる雰囲気に自らを変えた。温かい空気に包まれた訪問者たちは、何度となく足を運ぶ。敏雄はその一人ひとりを丁寧に見送った。
  こんな話も残っている。
  墨田政子は、原爆によって焦土と化した広島から上京、世田谷の姉の家に身を寄せていた。そして、敏雄を訪ねては、毎日のように書道と短歌に励んでいた。
  日々の課題を終え、帰ろうとすると、敏雄とキク夫人は、玄関に正座をして、政子を見送るのが常だった。息子の竹秋は靴べらを用意し、政子が靴を履き終わるまで静かに待っていた。当時の政子はまだ十代。
  「一少女の私まで歓待し、いつも気にかけてくださるお心に、ただ頭の下がる思いでした」
  敏雄亡き後、政子は夫を伴って久しぶりに丸山家を訪ねた。この時も、キク夫人と息子たちが、少しも変わらぬ笑顔で出迎えた。
  「今にも先生が『やあ、よく来たね』とおっしゃって出てこられるような気がしてなりませんでした」
  彼女はそう述懐する。
  現代人は、「家に来たお客」という意識が薄くなった。だが、昔はそうではなかった。父が勤めから帰宅し、子供の友達が遊びに来ていたら、「やあ、いらっしゃい」と声をかけたものだし、親のお客さんには、「ご挨拶をしなさい」と子供は言われたものだ。誰のお客であろうと、家に来た人は、一家総出でもてなした。それが日本の美風でもあった。
  送り迎えの習慣は、挨拶一つにも心がこもり、頭も自然と下がってくるようになる。家族からは、「私の知人も大切にしてくれる」という感謝が生まれる。小さな輪が、思いもかけず温かく広がっていくのである。